鳴声

気がつけば夜、外を歩くと足下から、そして頭上から、虫の声がする。鳴り止まないそれを聞きながら雑木林のような学校の庭を歩いていると、頭痛がするくらいの絢爛とした音。虫の声は相手を呼ぶ信号なのだ、と昔説明されたけれど、こんな音の洪水の中で、虫達は自分の相手を迷わずに探せるんだろうか?音が大きいという理由よりはその高音でのビブラートにやられて、虫達が巧みに震わせる羽と同じ様に震えている私の鼓膜はその動きにしびれて、耳鳴りを起こしてしまいそうだ。上から下からわき上がり降り注ぐ音、虫達がそれをたよりに行くはずのそれが、私の三半規管を狂わせ、酩酊させる。暗い地面に街灯が照り返り、頭上では月がまぶしいほどの光を投げかける。上も下もわからなくなる。ここはどこですか?