乱歩

最近バイトばかりしていて疲れ気味。昨晩は読んでいた本に突っ伏してそのまま寝てしまった。
ところで、自殺サイト連続殺人の男が江戸川乱歩の小説の挿絵に触発されたと言っているらしい。自殺サイトのようないかにも今という事件の道具立てに江戸川乱歩という組み合わせは少し古風に見える。しかし、乱歩の探偵小説は東京の都市化を背景に書かれ、そこでは匿名の人と人との関わりが重要なのだからこの取り合わせは実は見た目ほどかけ離れてはいないのかもねえ、と思ったり。こうした乱歩とその時代的背景や東京の都市化については松山巌『乱歩と東京』が詳しい。

乱歩と東京 (ちくま学芸文庫)

乱歩と東京 (ちくま学芸文庫)

有害ゲームなどの議論が最近喧しく(グランド・セフト・オートでしたか?あれが神奈川では18才以下に売ると罰金だとか)、ああいう議論は大抵いつも目新しいものにばかり行くけれど、今回の事件でやはり有害なものなんて今に始まったことではないよな、と再確認。まあ、乱歩は何度も発禁処分受けているから、当初から(政治状況など色々な理由によっているのではありますが)「有害」と見なされていた訳だけれども。しかし驚くのは、いまだにこうして実際の事件の引き金となるほどに乱歩が力を持っているということだ。面白いもんねえ、乱歩。特にその有害な部分や、「作中、現在からすれば表現に穏当を各部分があるが、古典として評価されている作品であり、執筆当時の時代を反映した乱歩独自の世界を構築しているものとの観点から、原文のまま掲載した」(創元推理文庫編集部後記より)あたりが。小さな辻褄や穏当さを気にかけず、ほとんどご都合主義のような展開でそういった怪奇的な快楽に走る、その過剰な力はほとんど爽快といっていいものだと思う。そういえば、松浦寿輝は戦後咲き乱れる猟奇的サブカルチャーの元祖の1人であると指摘した上で、乱歩の小説に流れる隠微な倒錯の毒が、吉川英治ら他の作家を差し置いていまだもって乱歩(特に少年探偵団もの)が読まれる理由だと書いていたなあ。あれ、でも今回犯人が触発されたと言っているのは挿絵で、乱歩のせいではないのかな?
今日はいつになく時事ネタ。