映画

久々に映画館で映画を見る。今日は、渋谷で『オペレッタ狸御殿』を鑑賞。とても、面白かったです。オペレッタ、という事が歌を歌っているというだけでなく、舞台である、という事においても扱われているのですが(例えば、スタジオのセットである事が丸分かりの床のリノリウムや、舞台のような配置や動きの俳優や、何かが吊るされた天井や、舞台照明のように色付きの影が投影された背景などにおいて)、それが虚構であり見ている私とは隔絶した世界である事を明示しながらも、しかしだんだんとその虚構が虚構のままにリアリティを獲得してゆくような気がしました。それが奇跡のように楽しかった。なんというか、最初の頃はCGとセットと妙に不自然な俳優の動きと、話のスムースな展開を断ち切るようなカット割りに違和感を覚え、戸惑うのですが、狸姫の言葉を解するようになり、狸御殿にだんだんと慣れてゆく主人公のように、それが当然の事として映画の在り方に合わせていけるように、いつからかなっている。映画の中で「狸の考えていることなどわからない」というセリフがありましたが、そうしたセリフに私は導かれて「わからない」違和感をただ受け入れることにしていったのかもしれません。もちろん、その違和感を覚えるような映画の在り方そのものが、魅力的であったのはもちろんですが。「狸御殿はパラダイス」まったくもってその通りだと思います。違和感を丸抱えにして楽しい。
鈴木清順監督の作品は、他に『殺しの烙印』しか見た事がないのですが、他の作品もまた見てみようと思います。『殺しの烙印』でも斜めに傾いた街のカットが格好よく印象的でしたが、今回もチャン・ツィイーオダギリジョーに駆け寄るクライマックスで傾いたカットが一瞬あり、どきりとしました。でも今回一番私の印象に残ったのはチャン・ツィイーオダギリジョーカップルの狸のお葬式(?)で何度も牛車に向かってカメラが地面ぎりぎりを滑ってゆくようなカットかもしれません。そのカメラの動きが、ただそれだけで割とシンプルな画面なのに美しくて。
ところで、私が見た回の次はガンダムの映画が上映されていましたが、そちらは立ち見が出るほどの混雑ぶりでした。狸御殿はがらがらだったのにねえ…。みんなガンダム好きなんですね。


帰りに古本屋で諸星大二郎の自選短編集『彼方より』を購入。家に帰って読み始めたら有隣堂のレシートが挟まっていて、日付が今年の5月でした。買ってすぐに売っちゃったんですね。好みじゃなかったのかな?

諸星大二郎自選短編集 彼方より (集英社文庫(コミック版))

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