貼紙

近所に、外見は本当にやる気のない、看板すら擦り切れてまともに読めない古本屋がある。だけれどそこは割とマンガの品揃えが良くて、水木しげる蛭子能収山野一根本敬といったちょっと癖が強い「ガロ」系のものや、普通の少年もののコミックスで名作なんだけれど年月が経過してなかなか見つけにくいものなどを多く扱っている。値段もそんなに悪く無いので、私はよくそこをのぞきに行くけれど、その古本屋自体が扱っているマンガの世界みたいでちょっと恐い。汚い手書きの字で書かれた意味不明の標語みたいなもや、良く分からないが怪しいスピリチュアルな雰囲気をかもしているイベント告知のビラがそこらじゅうにべたべた貼ってある。多分2人で交代で店を見ているおばさんと若いお兄さんの店員さんもちょっと(ものすごく、ではないところがみそ)暗い。山野一が書きそうな雰囲気。もし意図的にやっているとしたらかなり完成度の高い不穏なこぎたない希望のなさだと思う。でも、いくらああいうマンガが好きだからって、それはマンガであるから好きなのであって、ああいう雰囲気の場所にはあまり長くいたいと思わないのが普通の人の神経だと思うので、それが店にとってプラスに働いているとは思えない。そしてともかくも私自身がその店の狭い通路でマンガを選んだり、立ち読みしたりしているとこの古本屋の世界から出られないのではと思い不安になるので、どうか店を変えてほしい。ビラを剥がすだけでも随分雰囲気が変わると思うけれどなあ。勝手な客だ。
ところで、今日はひさしぶりに季節相応の、というよりむしろ暑い日だった。そろそろ本格的に暑くなりだすのだろうか。